そうやってシアトルは
右側を走る車に流されて、気がつけばもう左側である
なんと坂の多い町か
かのジミヘンもカート・コバーンもイチローもこの坂を上ったか
イヤホンはめて『Nevermind』を聴く
この町は乾いている
「Come As You Are」のゆれるイントロもそれを潤すものではない
乾いていて中に入るのを拒むんだ
交わろうとして近づいたものは跳ね返され
他のものにぶつかるまでまっすぐ飛んでいく
ちょうどブロック崩しのボールみたいに
「Breed」の歌い出しで世界は満ちた
この町はブロック崩しのボールだらけだ
お互いがお互いを跳ね返すことで安定してしまった町
そうすることで繋がる人々
それも、ありなのだ
町には実にカフェが多い
一ブロックに一つのスタバがあると言っても過言ではない
やはりコーヒーも、身に染み入るというのではない
胃袋の中でブロック崩し
でもただ一つ、
カフェで戦争は起こらない
坂を上りきって振り返れば、遠くビルの間に海が見える
アメリカ北西端の港町
ここで戦争は
お互いがお互いを跳ね返すことで安定してしまった世界
そうすることで繋がる人々
それも、ありなのだ